三井海洋開発(MODEC):為替ヘッジプロセスの自動化への道のり

三井海洋開発(MODEC):為替ヘッジプロセスの自動化への道のり

三井海洋開発(MODEC)は、海洋石油・ガス生産プロジェクトにおいて利用される浮体式設備の世界最大のオペレーターです。同社ではこれまで為替ヘッジのプロセスをマニュアルで行っていましたが、2020年にこのプロセスの自動化に踏み切り、ヘッジに要する日数をこれまでの3日から1日以内に短縮することに成功しました。

三井海洋開発(本社:東京)は、深海石油開発のための浮体式設備の設計から資材調達、建造据付(EPCI)を一括で提供しています。この浮体式設備にはFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、FSO(浮体式海洋石油・ガス積出設備)、浮体式液化天然ガス生産設備(FLNG)、緊張係留式プラットフォーム(TLP)、セミサブマーシブル、係留設備や、ガス生産のための浮体式設備の課題を解決する新しい技術が含まれています。

三井海洋開発は、世界最大のFPSOの独立したオペレーターとして、深海石油開発のための施設を専門としています。「われわれはその設備を顧客に売却する場合もありますし、あるいはそのまま所有して、顧客のために20年から25年の間、操業する場合もあります。」と三井石油開発の財務企画および財務マネージャーのQiurong Chong氏は言います。Chong氏の所属する部門はシンガポールにあり、中古タンカーのコンバージョン(FPSO, FSOへの改造)やFPSOのEPCIを担当しています。建造されたFPSOの多くはシンガポールから三井石油開発のブラジルにある部門へと運ばれますが、そこではベッセルのオペレーションやメンテナンスが行われます。「したがって、われわれの会社のオペレーションは主にブラジルで行われているのですが、オーストラリアやガーナ、ベトナムでも行われています。」

自動化の必要性

三井海洋開発は、グローバル企業として数多くのベンダーや主要な設備サプライヤーと取引があります。「私たちは世界各地のベンダーと取引しています。中国のベンダーもありますが、通常USドルで取引しています。一方で主要な設備サプライヤーは、イタリア、ドイツ、オランダなど欧州に所在しているので、ユーロが主要な外貨のひとつです。私たちの機能通貨はUSドルですので、大きな為替リスクにさらされていることになります」とChong氏は言います。

三井海洋開発の財務部門ではこれまでスプレッドシートを用いてFXヘッジプロセスをマニュアルで管理していましたが、2019年末になるとプロジェクトに関連した購買注文(PO)の将来のキャッシュフローヘッジのための為替予約の残高は約350取引にも増加しました。Chong氏によると「購買オーダーには、ドル支払額、支払スケジュールの詳細、支払予定日など、為替取引のためにベンダーから取得が必要な情報が含まれています」。

購買オーダーの情報は、まずシステムから抽出し、そしてエクセルスプレッドシートに取り込み、為替ヘッジを行っていました。これはとても手間のかかる作業ですが、為替取引の件数が今後増加していくことが見込まれるため、三井海洋開発ではこのプロセスを自動化することを決断しました。「エクセルによる作業では、データの正確性や品質の管理が難しく、また、ごく少数の人たちだけが口座情報にアクセスできる状態でした。このようなマニュアルでのスプレッドシート作業には極めて大きなガバナンス上の問題もありましたので、プロセスの改善が必要でした。会社が成長するに伴い、同時進行するプロジェクトの数も増えていったため、何百もの取引をマニュアルで更新し、そして管理していく作業は限界を迎えていました。」とChong氏は言います。

STPのためのSAP TRMモジュール

これまですべての為替予約取引はEメール、手紙や電話などによって取引内容が確認され、2つの銀行と一つのキャッシュセンターの間で処理されていました。2つの銀行では、全ての取引通貨毎にトータルで8口座ずつが開設されています。月次の時価評価が各銀行から提供されており、決済時には自動的に三井海洋開発の口座残高が増減される一方、総勘定元帳の記帳はSAPにマニュアル作業で行われていました。また為替予約取引の件数は、数年後には500以上に増える見込みとなっていました。

2020年夏に、三井海洋開発はSAPのTRMモジュールを導入し、為替予約取引プロセスをSTP化することに決めました。Chong氏は「為替取引にどのようなシステムを使っているのか、いろいろな人に聞きました。最近の話ですが、われわれの会計システムは2017年にSAPに統合されました。またベンダーや購入オーダーの情報は全てSAPの中に入っているので、為替取引も全てSAPに統合してはどうだろうか?と考えたのです。これがSAP TRMモジュールに決めた理由です。」と話しています。

要望に応える

そのため、新しいシステムは統合され、自動化される必要がありました。「われわれとSAPとの協業は大変うまくいっていたのですが、そのSAPがわれわれのサポート役としてZandersを推薦してくれました。そこでわれわれはZandersにシステムのデモを依頼して、SAPのTRMモジュールでの業務フローや機能がどのようなものかをチームに見せてもらいました。それはわれわれの要望することにしっかり応えてくれるものであり、またわれわれが理解できなかったこともZandersから説明してもらえたので、十分に納得することができました。われわれ財務部門が理解できるような、とてもシンプルな言葉や事例でコンサルタントと話ができるのは、とても重要なことだと思います。これがZandersをこのプロジェクトのコンサルタントとして採用した理由です。」
Chong氏はZandersに、為替エクスポージャポジションと為替予約取引によるヘッジの関係が正確に把握できるように、プログラムをカスタマイズするように依頼しました。「新しい購買オーダーが発注された際には、その情報が読み取られ、トレジャリーモジュールに取り込まれます。しかしながら、われわれはSAPを標準的な使い方をしておらず、いくつかの点で非常に複雑な処理が必要で、プログラムをわれわれの希望通りに動かすことがとても難しかったのですが、Zandersがこれらの複雑な問題を解決してくれました。現在、プログラムは順調に動いています。このプロセスにより、IFRS9に準拠した会計書類が作成でき、月次の時価評価や決済のための総勘定元帳への入力もできるようになります。」

システム連携

「プロジェクトは2020年8月に開始されましたが、まず主なユーザーのトレーニングからスタートしました。このトレーニングのおかげで、われわれは全体のプロセスについて十分準備することができ、大変助かりました。そしてその後4週間をかけて、何が必要か要望を集めました。この過程は非常に大変でしたが、そのおかげでとても生産的なものとなりました。そのままでは対応できないような問題もありましたが、その場合もZandersにお願いして力を貸してもらいました。その結果、すべての問題は解決され、約1年半のプロジェクトの末、今年2月にシステムを稼働させることができました。」

現在、システムは互いに連携され、稼働しています。「現在までのところ、システムは上手く運営できています。ところどころで小さい問題は発生しましたが、その際にはZandersに問題解決を依頼しました。プロジェクトすべての過程において、ZandersのコンサルタントのMichielとMartには本当にお世話になりました。ヘッジ会計の入力もシステムにより処理されます。自動化によって、処理時間はこれまでの平均3日間から1日以内に短縮されました。何百もの為替取引の効果を計算するのにエクセルでは何時間もかかるため、四半期毎にしか評価を行なっていませんでしたが、現在は毎月行うことが可能です。」

次のステップ

三井海洋開発の財務部門にまだ課題はあるのでしょうか?Chong氏は「われわれはまだ新しい業務プロセスを定着させ、新しいシステムに慣れようとしている段階です。すべてがより落ち着いた段階で新しいことに挑戦したいと考えています。財務部門にとっては、為替取引の自動化は最初の一歩にすぎません。日本の本社では、他の多くのレポートも依然としてマニュアル作業で作成しています。本社でもこのTRMモジュールを導入することで、本支社間で情報を切れ目なく共有することができ、時間のズレを削減したり、本社のためにわれわれが作成する必要もなくなるでしょう。」と述べています。